手打ちそば屋は眠れない

十割を打つには、特別の技があるわけではない。

そばうちを趣味にしていらっしゃる方も多いようで、
先日も色々と質問をされる方がおられた。
なんでも、二八で練習しているのだが、
十割のそばを打てるようになりたいとのこと。
ついては、十割で打てるコツがあるかとのこと。


私は別に、二八だろうが十割だろうが、
打ち方に変わりはないと思っている。
ただ、十割で打つ時のそば生地は、
二八に比べて伸びにくいので、
無理な力をかけると、切れたり穴が開くことがある。
だから、ていねいに、基本通りに伸ばさなくては。


そのためには、木鉢で、均一な水回しと、
しっかりとした捏(こ)ねができていなければならない。
逆にいうと、二八そばで、基本的な打ち方ができていれば、
十割でも自然に打てるはずだ。


私自身、週に一回「粗挽き十割そば」の日を設けているのも、
そんな基本の打ち方ができているか、
自分で確認するため。
人間、すぐに怠けるからね。
(あっ、私だけか。)


十割は湯ごねにする方もいらっしゃるけれど、
湯ごねにすると食感が変わるので、
まあ、その方の好みだろうね。
ただ、更科粉や粗い粉を打つときには使うので、
覚えておいた方がいい技術。


そばに使うつなぎ粉は、小麦粉が使われるが、
その種類も多い。
パンや、うどんに使われるような、
香りの高い小麦粉は、そばには向かないようだ。
つなぎ粉が足らなくなったからといって、
家庭用の小麦粉を混ぜても、
うまくいきませんよ。


前にも書いたけれど、
十割だからうまいとか、
高級だとかいうことはない。
むしろ、端正に打たれた二八そばの方が、
はるかにそばのおいしさを味わえると思う。
そばらしい、手繰り上げる醍醐味を楽しめる。


だから、角の立った、
キレの良い二八そばを打つことに努めましょう。
そうすれば、十割でも、
すんなりと打てるようになるはず、、、。

 


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