かんだた瓦版

醤油探し再び!

 四年ほど前の瓦版で、かんだたで使っている醤油を紹介させていただきました。

 かんだたで使っている醤油は、長野から車で1時間ほどかかる、上田市のはずれにある、小さな醸造所で作られていました。味噌と、醤油を、昔ながらのやり方で作っている、家族経営の会社です。

 この醤油が、なかなかしっかりとした味で、そば汁にしても、みりんとよく合いダシの風味を引き立ててくれます。だから、時間をかけても、その醸造所まで、醤油を仕入れに行っていました。

 いい醤油屋さんを見つけたと、喜んでいたのです。ところが、世の中思うようにいかないものですね。

 前々から腰の痛みに苦しんでいた醸造所の親父さん、ある時、いきなり、「や~めた!」と言って、醤油づくり、味噌づくりをやめてしまったのです。奥さんも突然でびっくりしたとおっしゃっていました。さて、後継者もいないので、この醤油は、今あるだけで終わってしまいます。

 さあ、新しい醤油を探さなくてはいけません。と言うことで、再び、そば汁に使う醤油探しの始まりです。

 さて使う醤油の条件として次の三つを考えました。

  1. 長野市周辺地域で作られていること。
  2. 化学調味料などの添加物を加えていないもの。
  3. 金槌(かなづち)で頭を叩いたら、金槌が壊れるほどの石頭の人が作っていること。

 3は、金槌は冗談としても、いい醤油を造ろうという信念を持った方の造るものでなければ、安心ができません。

 長野周辺には、味噌づくりをしているところがたくさんあるので、醤油もすぐ見つかると思っていました。ところが、これが、なかなか見つからなかったのです。

 前に醤油を出していた味噌屋さんは、今は醤油づくりはやめてしまったとのこと。

 他の味噌屋さんの醤油は、しっかりと化学調味料、保存料が入っています。別のところでは、店先に醤油が並んでいるのに、本当は他のところに頼んで造ってもらっていると、店の人が小さな声で言っていました。

 あれ、そういえば少し前までは、地元で造った醤油がスーパーなどでも売られていたのに、今ではすっかり見かけなくなってしまいました。店先に並んでいるのは、大手メーカーのものばかりです。

 実は、いくつかの味噌屋さん、醤油屋さんに問い合わせをしているうちに、判ったことがあります。

 それは、最近は醤油が売れなくなったこと、特に、一般の家庭であまり醤油を買わなくなった、ということです。

 食生活の変化というのでしょうか。醤油を使う料理は、家庭ではあまり作られなくなっているのですね。

 そうして、地元の人たちに使われていた、地元の醤油屋さんで造った醤油が売れなくなってしまっているそうなのです。なるほど、だから、醤油づくりをやめてしまった醸造所が多いのですね。

 

 

 

 でも、そば汁に使う醤油を探さなければならない私に、なるほど、などと感心している時間はありません。

 それでも、探してみると、いくつかの醤油が集まりました。

 実際にそば汁を作ってみて、選んだのは、江戸時代から続く老舗の味噌屋さんのものです。

 今までのものと比べると、ずいぶんと上品な感じの汁になりました。その分、汁の濃さで調整しなければなりません。

 今回の醤油探しで、改めて、醤油の大切さ、地元の味を守っていく難しさを感じたものです。

かんだた店主 中村和三