かんだた瓦版

乗鞍岳は雨降り!

 「あれ、どうして雨降りなのだ!」

 そうです。登山口の、標高二千七百メートルの畳平でバスを降りれば、雨がざあざあと、音を立てて降っているではないですか。

 天気さえよければ観光客であふれているはずの、広いバスターミナルも、今は閑散としています。

 二週間以上、ずっといい天気が続いていたのに、私たちが山に登ろうという日に限って、こんな雨が降っているのです。よっぽど、日頃の行いが悪かったのでしょうねえ。

 忙しかった夏も終わりに近づき、9月に入って、やっと頂いた二日間の夏休み。これを機会に、北アルプスの一番南にある、標高三千メートルを超える乗鞍岳に登ろうと思いました。

 といっても、私たちは、本格的な登山をしている訳ではありません。

 それでも、そんな高い山に登ろうとするのは、乗鞍岳が、日本で一番簡単に登れる三千メートル級の山だからです。何しろ、頂上まで高さにして三百メートルと少しのところまで、バスで行けるのです。

 ゆっくり歩いても、往復三時間もあれば、頂上に立てるという、天気さえよければ、軽装の観光客が、列をなして登る山なのです。それなのに、ざあざあ降りの雨では仕方がありません。

 それでも、途中の山小屋までは平らな道なので、雨合羽に傘をさして行ってみました。多くの方が、途中で引き返してきていましたね。かくして、ほかに誰もいない山小屋の食堂で、静かにコーヒーをすすることになりました。

 長野はご存知の通り、山に囲まれています。

 以前はよく、その中のいくつかの山に登ってみました。

 そんなに高い山ではありません。いわゆる里山と言われる標高千メートルから二千メートルぐらいの山です。

 例えば、長野市からよく見える飯綱山、志賀高原の岩菅山、志賀山、菅平の四阿山、独立峰で標高の割に眺めのいい一夜山、虫倉山、独鈷山などです。

 どれも、登山口から、ゆっくり歩いても二時間か三時間で、山頂を踏める山です。たいてい、登山客も少なく、静かに山の雰囲気を味わえます。様々な木々に囲まれて、森の空気を吸うと、体中が生き生きとしてくるような気がするのです。

 でも、ここのところ、休みの日は畑仕事に追われ、なかなか山に行けませんでした。久しぶりなので、大きな山に登ろうと思ったら、この雨降りです。

 コーヒーも飲み終わって、やっぱり戻ろうかと思っていたら、山小屋の人が言います。薄日が射してきたと。

 見ると、立ち込めていた雲が切れて、乗鞍岳の山頂も見えるではないですか。この機会を逃す手はありません。

 ごつごつした岩の上を一時間ほど歩いて登った山頂には、神社の祠がありました。他に人はおらず、風を避けながら、ゆっくりと、持参した弁当を頂きました。

 雲の切れ目から、穂高や槍ヶ岳が、同じ高さに見えます。南には、御岳山がどっしりとした山容を見せてくれました。

 こうして、時々は山に登り、大きな、ゆったりとした気分を頂いて、皆様に喜んでいただくようなそばを、作っていければと思っています。

かんだた店主 中村和三